和食の味を決めるのは、何といっても「だし」。昆布やかつお節から丁寧に取っただしは、料理の風味を格段に引き上げてくれます。でも、「正しい取り方がわからない」「種類が多くて使い分けが難しい」と感じている方も多いのでは。
この記事では、家庭で使われる主なだしの種類と、それぞれの正しい取り方をわかりやすく解説します。基本さえ押さえれば難しいことはないので、ぜひ毎日の料理に取り入れてみてください。

だしの種類と特徴
日本料理で使われるだしには、いくつかの種類があります。それぞれ風味や合う料理が異なるので、まずは主な4種類の特徴を押さえておきましょう。
かつおだし
かつお節から取るだしで、芳醇な香りと豊かなうま味が特徴です。イノシン酸を多く含み、お吸い物や茶碗蒸しなど、だしの風味を前面に出したい料理に向いています。一番だしはさっと取って上品な味わい、二番だしはじっくり煮出してコクのある味わいになります。
昆布だし
昆布から取るだしで、グルタミン酸によるやさしいうま味が特徴です。香りは控えめなので、素材の味を活かしたい煮物や鍋物、炊き込みご飯に適しています。だしに向いている昆布は主に真昆布・利尻昆布・羅臼昆布・日高昆布の4種類です。
- 真昆布:上品で澄んだだしが取れる。お吸い物や湯豆腐に
- 利尻昆布:少し塩気があり、京料理で重宝される。煮物全般に
- 羅臼昆布:濃厚で甘みのあるだし。味噌汁や煮物に
- 日高昆布:煮えやすく、だしを取ったあとそのまま食べられる。家庭向き
合わせだし(かつお×昆布)
かつお節と昆布を組み合わせた合わせだしは、イノシン酸とグルタミン酸の相乗効果でうま味が飛躍的にアップします。味噌汁・煮物・おでんなど幅広い和食に使える万能だしで、家庭料理ではこの合わせだしがもっとも重宝します。
煮干し(いりこ)だし
カタクチイワシなどの小魚を乾燥させた煮干しから取るだしです。力強いうま味とコクがあり、味噌汁やうどんのつゆによく合います。地域によっては「いりこだし」とも呼ばれ、特に西日本では定番のだしです。
- かつおだし:香り豊かで上品。お吸い物や茶碗蒸しに
- 昆布だし:やさしいうま味。素材を活かす料理に
- 合わせだし:うま味の相乗効果。万能タイプ
- 煮干しだし:力強いコク。味噌汁やうどんに
【基本】かつおだしの取り方
一番だしの取り方
一番だしは、かつお節の香りとうま味をさっと引き出した上品なだしです。お吸い物や茶碗蒸しに最適です。
材料(約1L分)
- 水:1L
- かつお節(薄削り):30g
手順
- 鍋に水を入れて強火にかけ、沸騰させる
- 沸騰したら火を止め、ひと呼吸おいてからかつお節を一度に加える
- かつお節が沈むまで1〜2分待つ(箸でかき混ぜない)
- キッチンペーパーやさらしを敷いたザルでこす
かつお節を絞るとえぐみが出るので、自然に落ちるのを待つのがきれいなだしを取るコツです。
二番だしの取り方
一番だしを取ったあとのかつお節をもう一度使います。一番だしに比べると香りは控えめですが、コクがしっかりあるので煮物や味噌汁に向いています。
- 一番だしで使ったかつお節と水500mLを鍋に入れる
- 弱火〜中火にかけ、5〜10分ほど煮出す
- 追いがつお(新しいかつお節5g程度)を加えて火を止め、1分待つ
- キッチンペーパーでこす

【基本】昆布だしの取り方
水出し法(時間がある場合)
最もシンプルな方法です。昆布を水に浸けて冷蔵庫に入れておくだけ。
- 水1Lに対して昆布10〜15g
- 昆布の表面をかたく絞った布巾で軽く拭く(水洗いはしない)
- 水に浸けて冷蔵庫で8〜12時間置く
前の晩にセットしておけば、朝にはおいしい昆布だしが完成しています。透き通った上品なだしが取れるので、素材の味を活かした料理にぴったりです。
煮出し法(すぐ使いたい場合)
時間がないときは鍋で煮出す方法を使います。
- 昆布の表面をかたく絞った布巾で拭く
- 鍋に水1Lと昆布10〜20gを入れ、30分以上浸ける
- 中火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す
沸騰させてしまうと昆布のぬめり成分が出て風味が損なわれるので、鍋の底から小さな泡がふつふつと出てきたタイミングで取り出しましょう。
【基本】合わせだし(かつお×昆布)の取り方
家庭でもっとも使いやすい万能だしです。昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸が合わさることで、うま味が何倍にも膨らみます。
材料(約1L分)
- 水:1L
- 昆布:10〜15g
- かつお節(薄削り):20〜30g
手順
- 昆布の表面を布巾で拭き、水1Lに30分以上浸ける
- 中火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す
- 沸騰させてからひと呼吸おき、かつお節を加える
- 1〜2分待ってからキッチンペーパーでこす
- 昆布は沸騰させない(ぬめりが出る)
- かつお節は絞らない(えぐみが出る)
- 昆布の表面の白い粉は甘み成分(マンニット)なので洗い流さない
【基本】煮干しだしの取り方
味噌汁に抜群に合う、しっかりした味わいのだしです。
材料(約1L分)
- 水:1L
- 煮干し:30〜40g
手順
- 煮干しの頭とはらわた(黒い部分)を取り除く
- 水に浸けて30分以上置く(水出しなら冷蔵庫で一晩)
- そのまま中火にかけ、沸騰したらアクを取る
- 弱火で5〜8分煮出してからこす
頭とはらわたを取り除くことで、苦みやえぐみを抑えたすっきりしただしになります。面倒な場合は取らなくても使えますが、仕上がりに差が出ます。

だしを手軽に取る方法
だしパックを使う
市販のだしパックは、かつお節や昆布、煮干しなどが粉砕されてパックに入っています。鍋に水とパックを入れて数分煮出すだけなので、忙しい日でも手軽に本格的なだしが取れます。
顆粒だしを使う
もっとも手軽な方法です。お湯に溶かすだけで使えるので、時短調理の強い味方。ただし塩分が含まれていることが多いので、味付けの際は塩加減に注意しましょう。
水出しだしポットを活用
だし用のポットやピッチャーに昆布やかつお節を入れ、水を注いで冷蔵庫に入れるだけ。一晩置けばおいしい水出しだしが完成します。毎日だしを使う家庭には、この「作り置きスタイル」がいちばん楽です。冷蔵保存で2〜3日は持ちます。
だしの保存方法
冷蔵保存
取っただしは粗熱を取ってから密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存します。保存期間は2〜3日が目安です。使い切れない場合は早めに冷凍しましょう。
冷凍保存
製氷皿に入れて凍らせる方法が便利です。凍ったらフリーザーバッグに移せば、必要な分だけ取り出して使えるので無駄がありません。冷凍なら2〜3週間保存できます。
よくある質問(Q&A)
Q. だしを取ったあとの昆布やかつお節は使える?
もちろん使えます。刻んで佃煮にしたり、乾燥させてふりかけにしたりと再利用できます。食品ロスの観点からも、捨てずに活用するのがおすすめです。
Q. 顆粒だしと本物のだしの違いは?
顆粒だしは手軽ですが、塩分や糖分が添加されていることが多く、風味も本物のだしとは異なります。一方、昆布やかつお節から取るだしは自然なうま味で、塩分を自分でコントロールできるのがメリットです。
Q. だしを取るのに適した水は?
軟水が適しています。日本の水道水は軟水なので、そのまま使ってOKです。硬水だとうま味成分が溶け出しにくく、だしの味が薄くなることがあります。
Q. 昆布の表面の白い粉は何?
あの白い粉は「マンニット(マンニトール)」と呼ばれる甘み成分です。カビではないので、洗い流さずにそのまま使いましょう。昆布は水洗いせず、固く絞った布巾で軽く拭く程度が正解です。
料理別のだしの使い分けガイド
味噌汁に合うだし
味噌汁にはかつおと昆布の合わせだし、または煮干しだしがよく合います。味噌自体にしっかりした味があるので、だしのうま味がベースとなって味に深みが出ます。具材が野菜メインなら煮干しだし、豆腐やわかめなど繊細な具材ならかつおだしがおすすめです。
煮物に合うだし
肉じゃがや筑前煮などの煮物には、合わせだしか昆布だしがよく合います。食材をじっくり煮込む料理では、だしのうま味が素材に染み込んでいくので、やさしい味わいの昆布だしが特に相性抜群です。
うどん・そばのつゆに合うだし
関東風のうどん・そばにはかつおだしベースの濃いめのつゆ、関西風にはかつおと昆布の合わせだしで薄めのつゆが定番です。うどんの場合は煮干しだしも風味がよく合います。
鍋料理に合うだし
鍋料理は昆布だしがベースになることが多いです。水炊きなら昆布だし一本、寄せ鍋ならかつおと昆布の合わせだしがおすすめです。食材そのものから出るだしと合わさって、食べ進めるほどにスープがおいしくなっていきます。

だしに関する豆知識
うま味の相乗効果とは
グルタミン酸(昆布)とイノシン酸(かつお節)を組み合わせると、単体で使うよりもうま味が約7〜8倍にもなるといわれています。これが「うま味の相乗効果」で、合わせだしがおいしい理由です。この発見は日本の科学者によるもので、今や世界中の料理人が活用している知恵です。
だしの「一番」と「二番」の使い分け
一番だしは繊細な風味を活かす料理(お吸い物・茶碗蒸し)に、二番だしはしっかり味付けする料理(煮物・味噌汁)に使うのが基本です。二番だしは一番だしほど香りは立ちませんが、コクがあるので普段の家庭料理には十分な実力があります。
まとめ
だしは和食の基本であり、料理の味を大きく左右する存在です。取り方のポイントをまとめます。
- かつおだし:沸騰後に火を止めてから加え、煮込まない
- 昆布だし:沸騰させない。水出しなら冷蔵庫で一晩
- 合わせだし:昆布→かつおの順番で。うま味の相乗効果が抜群
- 煮干しだし:頭とはらわたを取ると雑味が減る
面倒に感じるかもしれませんが、一度やってみれば意外と簡単です。だしの香りが広がるキッチンは、それだけで幸せな気分になれます。
だしについてさらに詳しく知りたい方は、「にんべん公式のだしレシピ」や「こんぶネットの昆布だし解説」、「キッコーマンのだし取り方ガイド」も参考になります。


